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名越武芸帖
其の五 インタラクションとキャラクター
 インタラクティブ。何となく聞いた事があるでしょう。どんな意味だと思います?
 俺も業界に入った時、最初は解らなくて辞書を引いてから「相互作用の」という意味を見つけた記憶があります。でもその時は単に語意が解っただけで、応用できる意味までは解りませんでした。
現実にゲーム業界では「リアルタイム性」とか「同時性」といった感覚で使われる事が多いようです。つまり"時間軸"の意味が強く込められており、極端な場合「リアルタイムか?否か?」の基準に使用される事もあります。
 しかし実際にそれはオカシイ訳で、例えばAという行為によってBという結果が出た。そしてAにはBが手に入った。それによってAは....という至極簡単な流れ自体をINTERACIVEと呼ぶのであって、リアルタイムかどうか?は本来関係ありません。いわゆる業界用語が独り歩きして自然と曲解されてしまったパターンですね。なので俺自身は先入感がなるべく無い様に、あえてINTERACTIONと呼んでいます。
 「そんなもんどうでもいいじゃん。大体の意味がわかれば」と言われそうですね。確かにそうなんですが、今回はそんな「良く耳にするけど、正体がイマイチ不明なモノ」についてお話ししようと思います。

 さて、インタラクションの状況を作るには作用させる為の入力装置(INPUT-DEVICE)が必要となります。いわゆるペリフェラルやコントローラーと呼ばれるモノです。最近ではマイクやタッチパネル、網膜の動きを読み取ったりするモノもあります。そしてこのコントローラーを使ってインタラクションを起こして楽しむのがビデオゲームです。
 おおよそのゲームの場合コントローラーを動かせば必ず何かが起きます。例えば十字キーの右を押すとキャラクターが右に動くとか。Aボタンを押すと車にターボがかかるとか。これらは全てそのゲームにおける特有のインタラクションの機能です。あえて特有と言ったのは、コントローラー自体には元々決められた仕様は無いからです。
 つまり「ここの位置にある赤いボタンはキャラクターがジャンプする事のみに使用する」なんてことは最初から決められていません。何をさせようが全てはゲームの企画に基づいたソフトウェアの設計側が決める事です。そしてそれらのコントローラーで起こせるインタラクションを駆使して、キャラクターに最大限の感情移入をしてもらえるように考えます。

 そうだ。ここでもうひとつ、ついで覚えてもらいたいのが、この「キャラクター」というフレーズです。
 業界以外の皆さんは、キャラクターといえばきっとマリオだったりサッカーゲームの選手だったり、ゲームの中で特に人間に代表される、関節を持った生き物系の絵の事を指すと思っている人が多いと思います。
 確かに現場でも格闘ゲームのキャラクターは「キャラ」と呼ぶのに、ドライブゲームの車は「車」と呼んでます。が、できれば「モニター上に表示された全ての絵の事」と考える様にして下さい。つまりマリオだけでなく、コインも、背景も、スコアの文字もみんなキャラクターという事です。

 さて、キャラといえば良く聞く言葉で「キャラが立っている」という台詞と出会う事があります。何なんでしょう?不思議な言葉です。あえて近い感覚で言い換えれば、「個性が引き立つ」と解すべきでしょうか?
 どちらにしても変な業界言葉みたいなので俺は好きじゃない言葉です。
俺の印象では「キャラが立っているか?どうか?」という人の会話を聞いていると「デザインが(格好)良いか?否か?」つまり「ヴィジュアル」に対して話をしている時に使ってるケースが多い様に感じます。でも「デザイン」の問題なら「デザインが良い、悪い」と言うべきだし、あえて正体不明の言葉で論ずる必要はありません。

 ちなみに先程「俺は「キャラが立つ」という言葉が嫌い」と言いましたが、嫌いな理由は前述の「デザインが良い、悪い」に誤解されるのが嫌な訳です。でもたまに使う事もあります。じゃぁ俺の考える「キャラが立つ」とはどんなモノかというと、今回お話してきた言葉で置き換えるならば「キャラクターとインタラクションのマッチングが高いレベルで行われているか?」で使用します。
 例えば俺にとってそれを感じるモノは「スト2の"KEN"」とか。
理由は殴る蹴るというゲームルールをバックボーンにしたインタラクションの上で、リアリティーの高い喧嘩スタイルのアクションとS.E.(特に大ストレートの決まった時の"ピッスィーン!"的な音)に高い快感を感じ、また今では当たり前になりましたが、入力難度の高い昇竜拳が決め技というイカシタ個性の位置づけが俺にミートした訳です。別に金髪に赤い柔道着のスタイルだけに惚れた訳ではありません。

 更に先程も言った通り「キャラ」は人間だけではない以上、他にも「キャラ立ち」を感じるモノもあります。
 例えば「リッジレーサー」
画面の絵に対して注視点が真横に移動して(首を振ってモノを見るのではなく、体ごと横移動させてモノを見る感覚)「キユルキュキュ??!」というS.E.と共にプレイヤーの操作感覚をドライブする状態は「車としてのキャラが立ってる」事に強いつながりを感じる訳です。マリオで出てくるコインなんかにも同じ事を感じます。
 そういう目線で自分の好きなゲームを思い起こしてみて下さい。
 みんな「キャラクターとインタラクションのマッチングが高いレベルで行われている」はずです。だってそれが無ければ、マリオも単なるヒゲおやじで終わってしまいます。
 なので「キャラが立つ」というテーマはキャラデザインだけでなく、企画、ソフト、デザイン、サウンド、全てに関わる話です。
 それぞれの職種でこのテーマを支え合う事が「キャラ立ち」への近道と言えるでしょう。そして本来はそこが正にそのゲームの「メインテーマ=ちからの入れ所」にもなるはずですから。
 でもこの「キャラ立ち」という言葉をいい加減に使って話す方も聞く方も、何だか解った様な、解らない様な会話に慣れてしまうと、お互い勘違いを起こして変な結果になったり「デザイン的に優れたキャラクターさえいればゲームは売れる」的発想につながりかねません。見失わないように気をつけないと。

 たまに思うのですが、子供のほうがこのテーマに関しては鋭いかも。だって「ウルトラマン好き?」と聞いて「好き」と答える子供に「何故?」と聞くと「???っていう武器がカッコイイから」とか「???っていう変身がカッコイイから」とか、さらに「デカくなって強くなるし」とか「一撃で敵をやっつけるし」的なデザインよりむしろ大抵インタラクションの部分にミートした答えをします。
 「円谷の造形センスがもともと好きだから」と答える子供はいませんしね。でも「キャラが立つ」に限らず、正確には良く解んない言葉って結構ありますよね。
 でもいい大人なんだから変な言葉なんて使わないで、分かりやすい言葉を胸張ってしゃべりたいものです。ではまた。
『ゲーム批評』 2000年9月号掲載
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