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名越武芸帖
其の十 ゲーム機の未来
 皆さんは定期的に読むゲーム雑誌ってありますか?俺は仕事なので否が応でも読みますが、最近見ていてあることが気になってます。何かというとパッと雑誌を広げて、そこに出ているゲーム画面が皆同じに見えること。そしてどのゲームも画面が暗いことです。そうでない画面のゲームは、強いて言えばスポーツゲームくらいかな?でもそれも最近は、ナイターや夕暮れの演出が増えていて、やっぱり暗い気がします。これって何故だと思います?思うに多分、より見栄えのする様にエフェクトの強調していった結果なんでしょうね。CGにおいて特にリアル系の画面のクオリティーを上げる時、その手法をとかくある一定のエフェクトに頼る傾向が存在します。ある程度の労力で、安定感の高い評価が得られやすいからです。

 なかでもライティングとパーティクルに代表される表現は、爆発や室内の照明等に"らしさ"を加える上で、最もオーソドックスなスタイルとして昔から好まれて使われています。そしてそれを生かすシーンは、やはり夜や密室の方が絵的に映えるので都合が良い。てな訳で、そういうシーンが自然と増えていくんだと思います。つまり雑誌を見る限りでは、今はそう思われて作られているタイトルが花盛り!って事ですね。

 でも確かに美しいライティングやカッコイイ爆発は見ごたえありますが、一度見たらもういいやって感じになりません?少なくとも俺はなる。なのでそろそろ別の表現も見たいですね。じゃぁ自分でやれって?その通り。頑張って探してますよ。毎日。ただ新しい表現を見つけたとしても、結局は使い方なんだよなぁ。

 それにとてつもなく良い爆発表現ができからといって、良いゲームが作れる訳ではありません。むしろ作り手が思い入れの強いシーンに対して、情熱を込めて作成したエフェクトを当てはめた方が、結果的に魅力的なモノを作れると思います。技術は疎かにできませんが、目先だけを追うのもね。

 では革新的な映像表現という意味でX-boxとかGAME CUBEには、何かしら将来のゲームの絵柄を彷彿させる機能は付いてるんでしょうか?まずザッと見る限りでは、飛び抜けたものは無さそうです。確かにハードでサポートされているエフェクト類やそれに組み合わせることで高まる付加機能、そしてそれらを支える性能自体も向上していますが、今までのソフトでも何とか表現できたレベルの延長線上とも言えます。という事は、ハード自体から決定的な絵柄(グラフィックを始め、画面の効果、演出等)の変化は期待しづらいって事ですね。
もちろん新機能、高性能は大歓迎ですよ。否定はしません。

 さて、ここまで新ハードでの「絵柄」の変化についてお話しましたが、ハードの進化には他にも重要な要素はたくさんあります。では最終的にハードの進化はどうなるのか?それを考えてみましょうか。じゃぁ一寸気が早いですが、X-boxやCUBEよりも先、それ以降のハードの簡単なシミュレートでもしてみましょう。大体10年先ぐらいのヴィジョンで考えてみましょうか。

 ではまず絵的な進化予想。グラフィックチップに飛躍的な変化がない以上、ポリゴンで絵柄を作ることは変わらないでしょうね。そしてポリゴンで画面を構成する以上、数の増加は当然求めるでしょう。今度はどれぐらいなんだろう?ウン兆とか。でもそこまで来ればモデリングもナーブスやソリッドモデラーなんかでモデル作ってポリゴンにコンバートして、ハードのポリゴン数の上限などを考えずにモデルを取り込めるからリダクション(ポリゴン数を間引く作業)はしないで完成できます。それどころか、モーションキャプチャーならぬ人間丸ごとスキャンして、本人の実写と見間違わんばかりのデータをとりだすゲームも出てきそうです。

 それ以外にも数の増加でいえば、CPUの速度、テクスチャーのメモリサイズ、グラフィックチップの描画性能等々は上がる一方でしょうね。あとは前から言ってるネットワークサービスですね。ソフトを買わないでも自宅に高速で配信。ダウンロードしてハードディスクへ持っていく。ついでにリアルタイム性の高い配信機能を利用して、ソフトやメーカーの宣伝告知も専門チャンネルを通して行うでしょうね。しかもそのチャンネルを通せばスポンサーから提供費までもらえたりして。

 でもここまで書いてて思ったんですが、実写さながらの映像、様々な配信のサービス。更にそれらを宣伝メディアとして利用できるチャンネル環境、これって何かに似ていると思いません?ていうか、いわゆる「衛星放送テレビ」そのものの構造だと思いませんか?ゲーム機ってそれと同じなんでしょうか?違うところはインタラクティビティーだけ?でもテレビ番組でもテレゴングやCS放送の視聴者参加番組もある訳で...テレビがゲーム的になってきたのかな?あれ?訳が解んなくなってきた。どこでオカしくなっちゃたのか?.....
いえいえオカしくありません。これが今回のシミュレートの結論です。

 現在ゲームハードは、間違いなく衛星放送端末を装備した家庭用テレビと同じ方向に向かっています。正確に言うとテレビではなく、テレビの付属機器に集約化されていく運命にあると考えます。例えば、テレビも以前は決まり切ったチャンネルしか見れませんでした。が、後に大衆の欲求が多チャンネル化を求め、チャンネル数が増えました。そして現在では、さらに細分化した個人のニーズに対応する為にBS放送が誕生し、PAY/VIEW等のサービスを行うことで、その欲求に対応した訳です。これをゲームに置き換えるなら、ゲームはもともとテレビの付属品的なポジションからスタートしました。そういう意味では、テレビのチャンネル数を増やす後付けチューナー的な役目を担っていると言えます。最初は特定のハードで特定のゲームしかできませんでした。が、技術の進歩とともにハード&ソフトという概念が生まれ、数が増え、内容のジャンルやニーズが多様化することで、そのニーズにミートしたハード&ソフトを供給することで産業が成り立っていました。
ただし、やりたいゲームが同じハードに必ずあるとは限らないので、その時はハードごと買い足す場必要があります。
テレビにしてもBSでサービスを受ける場合はチューナーはチャンネルによって違うので、見たい番組が違えば買い足さなくてはなりません。
つまりテレビのチャンネル数が増えたのと、ゲームのソフトの数が増えてゆく過程はお互い似ています。
ただ、このテの話題が出るときに「テレビはSONY、三菱、どこのメーカーのモノを買っても番組は全部見れるし、それだけでも十分な機械だ。だからゲームと並べて評価することはナンセンスだ」と言う人もいますが、それは古いデフォルト、つまり初期設定の問題であって論点が違います。
テレビ=特定のチャンネルを映すモノという考えは、洗濯機は洗濯だけをするものだ的な、家電はそれぞれ特定の機能のみを満たす。という、それこそナンセンスな古い固定観念です。
俺が言いたいのはテレビとは、もはや「モニター(単に映像を映し出すだけのモノ)」であって、それ以外の機能は他の外部装置が受け持つことで使用目的を変えるという代物に変わってしまったという事です。
その認識をした上で、ゲームハードはネットワークを通じて、このBSのチューナー化された役目に近いサービスの形になりながら、それに必要な各々の機能を外付けのハードに備えていくべきだ。と俺は思う次第な訳です。
でもその理屈からいくと、ハード戦争はチューナー戦争と形を変えてながら、続いていくんだろうなぁ。
結局。ではまた。
『ゲーム批評』 2001年7月号掲載
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