皆さん初めまして、こんにちは。 この度、新しくアミューズメントヴィジョンのサウンドチームにやって参りました、Hideki Naganuma と申します。 早速ですが初のコラム登場という事で、こんな事をやってきた人間ですという自己紹 介を兼ねまして、これを聴け!これがジェットサウンドだ!という心意気で、自分が関わった代表作と呼べるCDをご紹介したいと思います。
※ 曲のタイトルでリンクが貼ってあるものは試聴できます。
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| タイトル |  |  | JET SET RADIO Original Soundtrack | |
| 発売元 |  |  | POLYDOR | |
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このゲームの画面を初めて見た時のショックを今でも良く覚えています。 一枚絵のアニメのようで奥行きがある、マンガディメンションと呼ばれる表現方法を 用いて、クールかつポップ、ちょっとおバカな独特のカリスマ的世界観には、一体どんな音楽が合うのだろうかと、1ヶ月ほど悩みに悩んでいろんなCDを聞きあさ りました。 「インラインスケートを履いた悪ガキ主人公たちが落書きしながら聴いているラジオステーションのカリスマDJがプレイするノンストップミュージック!!」 という難題な設定でしたが、作り始めたらこれが楽しくて楽しくてしょうがない、夜中に一人、席でニヤニヤしながら作っていました。 恐らくゲーム本編を作っている若いジェットチームの方々もみんな楽しんでいたに違 いない! そんな感じがゲーム全体を通しても現れている作品だと思います。 良く聞かれるのですが、ジャンルで言いますと、ビッグビートと申しますか、ポップファンクと申しますか、キッチュなヒップホップと申しますか、ジェットサウ ンドです。 画面の色使いが、赤っ!青っ!黄っ!と非常にはっきりしたものでしたので、ストリート感のあるクールなビート + ポップで楽しい感じを出したいと思いました。 制作時、参考にビッグビート等のCDをたくさん聴きましたが、結果、ダンスフロア向けのそれらともちょっと違い、既存のゲーム音楽とも違う、 オリジナルなジャンルになったのではないでしょうか。 そう言えばタイトル曲の 「Let Mom Sleep」のママ(おばさん)の英語のラップ部分が「ケロケロっとカエルが鳴いちゃうよ」って聞こえると良く言われていました。 60年代ガールポップをビッグビート的に表現した 「Sweet Soul Brother」やラストステージで悪魔のレコードとして脳裏に焼き付くような 「Grace & Glory」も独特で他にあまり例が無い(宗教音楽+ブレイクビーツ)、面白い曲だなぁと今も思います。 個人的お気に入り = 3.That's Enough / 5.Sneakman
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| タイトル |  |  | JSRF -Jet Set Radio Future- Original Soundtrack | |
| 発売元 |  |  | SCITRON DIGITAL CONTENT INC.,JAPAN | |
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前作とは路線を変えたいというチームからの依頼を受け、また前作よりもかなり未来のお話という設定でしたので、ジェットサウンドも更に進化させました。 具体的には、全体的にテンポアップ、音数パート数も増えて、ビートはよりハードにエッジの効いたものとなっており、ジャンルでいうと、デジタルロックやテクノ・エレクトリック色が強くなった感じです。 画面は少し薄暗いダークな未来という感じになり、キャラクター達もスマートに大人になっていたので、前作でのポップで楽しい感じ、おバカな要素はかなり抑えました。 結果、自分本来の色に近いものになった感じがします。 また前作の主だった曲も新たにリミックスされて収録されています。 路線を変えたロック色の強い 「The Concept of Love」と、キャッチーなイメージを引き継ぎつつ進化した感じの 「Funky Dealer」のどちらがタイトル曲として相応しいか迷っていたのですが、E3での初ビデオ出展時に「The Concept of Love」が好評だったと聞き、ならばタイトル曲にしてそのハード路線でいってみようという事 になりました。 全体的にディストーションギター + 未来感のある電子音を使用した曲が多いです。 画面にマッチしたポップでオリジナルな世界観を重視した初代ジェットに対し、JSRFではゲーム演出する事はもちろん、各々の楽曲単体の完成度/存在価値をより重視した作りになっております。 少し専門的な話になりますが、これらの作品では、いわゆる打ち込み(MIDIによるプログラミング)はほとんど行わず、生音等の素材波形を加工/構築してフレーズやグルーヴを作っていく手法(あまりに細かくやり過ぎると気が滅入ってしまいます)を採用しています。 これはキーボードやギターを普通に手癖で演奏して作曲という作り方では、けして思いも付かないような面白いフレーズや、カッコいいグルーヴを生み出したい 時に使用します。 実はJSR、JSRF共にスタジオでの録音は一切行わず、すべて自席完結のデスクトップ ミックスなんです。 今はコンピュータや機材が進化したおかげで、曲のジャンルに合わせて曲の作り方さえ選べる時代となりました。 悲しいかな一世を風靡したサンプラー(ハードウェア)という機材も今では殆ど使わなくなりましたね。 個人的お気に入り = 2.Fly Like a Butterfly / 5.Teknopathetic 一番苦労した(達成感のある)曲 = 3.Funky Dealer
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| タイトル |  |  | Remixes GVR / Guitar Vader | |
| 発売元 |  |  | berry records | |
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ジェットセットラジオで出会ったギターベイダーというガレージギターポップバンドのライヴを見にいった際に「今度リミックスアルバムを出すんだけど1曲やってみない?」という流れで、リミキサーとして参加しました。 1曲目の 「I Love Love You」をリミックスしております。 実はこの曲のオリジナル版は初代ジェットの時に 「Super Brothers」とどっちを使わせてもらおうか迷っていた曲でして、尺が長い 「Super Brothers」の方を採用という経緯があり、な らばあの時の 「I Love Love You」を新たに長めにリミックスしようという思いががあっての選曲 でした。 主にジェットファン向けのアルバムという事で、内容はかなりジェットサウンド風なのですが、ボーカルのMIKIさんの独特な魅力を最大限に生かした?リミックスです。
またこのアルバムには初代ジェット発売以来、ユーザーの方々から「ガムが出てくる時にかかる、あの曲は誰のなんていう曲?」という質問が殺到した、サントラ未収録の 「Magical Girl」 「Super Brothers」のオリジナルミックスも初CD化で収録されています。 これらの曲をきっかけに、彼らは世界中にファンが(ファンサイトまで)できてしまうバンドとなりました。 ここで紹介した3曲は、彼らの全アルバムの中でも一番ポップでキャッチーな3曲ではないでしょうか。 さて、こんな私ですが、これからは弊社アミューズメントヴィジョンにて、「なんか新しくてカッコいいもの」を作り続けていきたいと思っておりますので、ひとつ宜しくお願い申し上げます。 最新作は、弊社から近日中にアーケードにて稼働予定のスケボーレースゲーム 「Ollie King」!! こちらのメインテーマは、70年代サーフィンミュージックを現代のデジタルロックと融合した風?な仕上がりとなっております。お楽しみに!! |