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HOME / コラム / 名越コラム / 第15回 不定期更新のコラムで
名越コラム
不定期更新のコラムです。不定期が前提とはケシカラン!やる気が無いように思われるかもしれません。が、やる気が無いのではなくて、やる気になった時に書いているので内容自体はやる気満々です。で、いつもは映画の話ばかりしていますが、今回は全く嗜好を変えて突然ですが教育の話をします。
何でも最近は義務教育の規定量が減ったらしいです。俺たちの頃(1970年代)に比べると3割も減ったらしい。確かに土曜日に休みが増えたりカリキュラム上、直接教科書の内容とは関係ない授業時間を設けたということは、その分、勉強する量が減るのは当たり前です。で、この発想に至ったのは「従来の詰め込み型教育では個人の発想を延ばすことができないから」と言う理由らしい。
うん。なるほど。でもそのゆとり部分をどう活用して、どう言う良い影響が予想されるのか?についてはあまり語られません。でもそれってちょっと無責任じゃないかな。日本の管理教育が崩壊したと言われて久しいですが、確かにその間に色んなことが学校で起こりました。学校での体罰、青少年への懲罰に対する一般的な見解の変化。休日の増加。授業時間の低下。学習内容の改変、というよりは縮小。個人的に一番ビックリしたのは円周率でπ=3になったことかな。小学校では小数点以下は計算しなくて良くなりましたからね。ガキの頃「円周率は絶対に割りきれない」と先生に聞いて、じゃあ俺が割って見せるぜ!くらいの勢いで、一度は自分で計算してみたことがみんなあるんじゃないかな。
そしてやっぱり割れず、むしろ算数とはまた違った、妙に神秘的な気分になった思い出がある俺としては微妙な気分です。まぁ円周率はさておき、俺が言いたいのは、学校は自己責任のエリアを減らしてないですか?ってこと。自由を与えて学ぶ量を減らし、その分、子供自身や家庭に教育という役割をシフトさせ過ぎじゃないのかなぁ。そもそも必要ないから授業を減らしているのか、子供の学力が低下したから覚えさせられなくなったのか?どっちなんだろう。でも俺はいつも思うのですが、日本は国土も小さく、人口も少なく、日本語という少数しか使わない特殊言語をしゃべり、石油や金のような資源もない国。そんな弱小民族が、一時期とはいえ世界を末席した先進国と呼ばれた時代があったわけです。でもそれは紛うことない勤勉さに裏打ちされた知恵と技術で勝ち取った評価ですよ。それこそが戦後の日本の魂と言っても過言ではない。
そしてその評価の源は、現在否定している「詰め込み教育」が生み出したものですからね。詰め込み教育、そんなにダメかなぁ?確かにその弊害は何かしらあると思います。でも学校の責任感は今より当時の方があった気がするけど。
それを今の日本は放棄しているように思えてならない。俺は「学校とは面倒くさい勉強に追われながら、自分のためになる人間関係の感覚を磨く場所。思いっ切り嫌なことと思いっ切り楽しいことが同時に存在し、皆でそれを共有しながら個々に何かを感じる場所。」であって欲しい。それが一番の教育環境だと思うんですけね。
俺にとって円周率が3である時代の割り切りの価値観は、果てしない日本の未来への不安とダブってしまってなりません。このテーマ、また機会があったらお話したいです。

名越 稔洋
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