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HOME / コラム / 第9回 となりの企画はよく柿食う企画だ
となりの企画はよく柿食う企画だ
 人間とは何か。どこから来て、そしてどこへ行くのか。
 本当に骨太なエンターティンメントとは、そういう重々しげな主題を面白おかしく、時には軽妙洒脱に時には緊張感を持って描き出すものだと常々考えているのですが、皆さん、どうもはじめまして。元スマイルビット企画の五百蔵(いほろい)です。
 珍妙な苗字ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

 さて、私はシステムもいじるし設定もやるしシナリオもやる企画なのですが、企画の内容を考え出していくとき、システムそのものからお話をより出していくのか、それとも設定やお話からシステムを発想していくのか?それは、アイディア次第で変るのですが、どの場合でもある程度焦点が絞れた頃合には、軸足を意識的にシナリオの方に置いていくようにしています。なぜそうするのかというと、前述しましたようにエンターティンメントは面白さの中に「人間とは何か」という普遍的で大きなテーマを織り込んでいくべきだと思うし、その為にはシナリオの質、方向性を充実させることが必要不可欠な作業になると思うからです。
 ユーザーが固有のルールに則って能動的に道を開いていくゲームという遊びは、やはり既存の物語媒体とは違った切り口でそういった主題を展開していける媒体だと思いますし、ゲーム市場の縮小と偏りが取りざたされる昨今、私たちの仕事は、そのような普遍性の方向へ大きく開かれていくべきだと思っています。
 というわけで、私はゲームという媒体においてより大きく普遍的な主題を、しかも面白く取り扱うための手立てとしてシナリオを重視しているのです。

<何を描くべきか?何を表現すべきか?>

 では、今の時代、何を、どう描くべきなのだろうか?
 当然、それが次の問題になります。その時々の流行を勘案して、という意味での”時代”はなく、今、我々が人間として置かれている状況そのものをにらんでだうえで、何について、どう描くのが適切なのか、どうやってより意味のあるポジティブなイメージ、メッセージを発するのか。そんなような意味において、です。

 例えば、最新作「イノセンス」に関連するインタビューで押井守監督が語っているように、人間について何かを描く時に、人間の世界そのものを取り扱っても仕方がない、むしろ<人間と人間でない他者>について描くことからしか、人間について意味のあることは何もいえない、という見方には一定の理があると私も思います。簡単に言えば、ほとんど無秩序といって良いほどの多様な価値観が渦巻いている現代においては、その渦中で右往左往するよりも、むしろそこから距離をおいて冷静になれる視点・ものさしを設定してそのうえでドラマを構築していく方が適切なのではないか、ということです。

 SFやファンタジーの方法論が現代の物語の作法として機能しやすい理由はここにあるのですが、私個人は、より古典的なアプローチ…純粋な”人間たちの物語”…で、現代に適切な物語を、適切なやり方で作り出すことはできないだろうか?と考えています。それは、価値観が混乱した状況だからこそ、忘れてはならないはずの最も単純な規範や感情といったものをえぐり出すような物語が必要なのではないか、ということなのですが…。

すいません、長くなってしまったので次回に続きます…


五百蔵 容
 名前五百蔵 容(いほろい ただし) 
 趣味映画・音楽・アニメ・漫画・小説、など虚構鑑賞一般 
 代表作ハンドレッドソード』『ガンヴァルキリー 
第8回
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