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名越武芸帖
『ゲーム批評』 マイクロデザイン社にて連載中(マイクロデザイン社のHPへ)


其の九   『ゲーム批評』2001年 最新号掲載中
其の八 ネットゲーム普及のために 『ゲーム批評』2001年 3月号掲載
其の七 伝えましょう 『ゲーム批評』2001年 1月号掲載
其の六 「良い」という感性について 『ゲーム批評』2000年11月号掲載
其の五 インタラクションとキャラクター 『ゲーム批評』2000年 9月号掲載
其の四 これからのゲーム 『ゲーム批評』2000年 7月号掲載
其の三 企画より大切なもの 『ゲーム批評』2000年 5月号掲載
其の二 新しさの意味 『ゲーム批評』2000年 3月号掲載
其の一 ゲーム成立の条件 『ゲーム批評』2000年 1月号掲載
 

其の一 ゲーム成立の条件 『ゲーム批評』 1月号掲載
 はじめまして名越です、本誌に書かせて頂くのは初めてなんですが「ゲーム制作」って何なの?なんていう興味を持っている方に対して、少しでも面白く読んで頂ければ幸いです。


 では先ず「ゲーム」って何?って所から始めましょう。


 現在「ゲーム」といえば「ビデオゲーム」がすぐに思いつきます。
 と言うよりはイコールに近い扱いになってますよね。
 でも実際はそうではなくて「ビデオゲーム」の普及が余りにも凄すぎたために起きてしまった現象であって「ゲーム」とは「ビデオゲーム」の事ではありません。
 皆さんは「ゲーム」ってなんだと思います?
 「遊び」でしょうか?
 それとも「娯楽」てな感じでしょうか?
 俺は、本来「ゲーム」とは「遊び」と同義的な意味がある以上に『勝敗要素のある遊び』や『遊びを更に膨らませる駆け引き』と言う意味で捕らえるのが正しいと思います。
 更にこれらの感覚の全く無いモノを俺は「ゲーム」と呼びません。


 次に「ゲーム」成立の為の条件とは?これは3カ条です。
 1、ルール:遊びを成り立たせ理解させる(どう遊べばよいのか、どうすれば勝ちなのか、終わりなのか)
 2、目的:勝負の目標、理由がはっきりしていること(勝てばどうなるのか?なぜ勝ちたいのか?)
 3、上達:スキル(コツ)が感じ取れること(どうすればもっと上手に、早く、高得点で、スマートに出来るか)
 これらが1つでも欠けると「ゲーム」として成立できなくなります。皆さんが今まで遊んだゲームの中で『つまんなかった』モノはきっとこれらの要素の何れか、もしくは組み合わせの設計に問題があったはずです。
 大抵は1か3の問題が多いようですね。ちなみに2が問題のケースでは修正も比較的簡単なのですが、1や3が問題の場合、特に1の場合はかなり厄介です。
 根本ですからね。
 でも過去にヒットしている「ビデオゲーム」にはこれらの3つの要素がキチント成立しています。
 例えばカプコンの『スト2』
 1、移動レバーと攻撃ボタンで〜秒以内に相手をK.O.して、先に〜本先取したほうが勝ち。
 2、勝ったら次のゲームはタダ。〜連勝すると鼻も高い。実際の人間に勝った気分も射幸性に満ちている。
 3、上中下段の攻守を基に設計され、あえて偶発性の低い必殺技も存在し、双方を習得すると更に気分良く勝てる。
 1を理解し、3の操作で2を目指す。どうです。素晴らしい。
 かなり省いて書いてますが、これだけでも「ゲーム」成立の為の条件は十分に入ってます。


 『スト2』に限らず過去の大ヒットゲーム達には上記の3つが必ずうまく入っています。
 自分で何か例にして考えてみて下さい。


 ちなみに上記の3カ条は「ビデオゲーム」以外にも通用します。
 例えば『セミ捕り』、これは立派な「ゲーム」です。「狩猟」という人間が生まれ持った本能的な感覚を『セミ』に対して行っている訳です。
 『狩猟』とは「駆け引き」です。ビデオゲームの対CPUが対セミになって戦う訳です。
 更に捕まえ方を訓練することで上達を極め、その結果『捕獲=勝利』そして何匹捕らえたか?でスコア的な目的要素も加わり、射幸心を満たすゲームとなるわけです。
 もちろん子供達にとって『セミ』がフォルム的に『かっこいい』と感じる部分もあるでしょうし、更に夏限定の滅多に出来ない行為という思いや、虫取り網という、これまた滅多に使う機会の無いモノを、道具として持ち歩くという楽しさもゲームの演出として効いています。
 そして『セミ捕り』という行為は、あえて名前を付けなくても行為自体が「ゲーム」になっている代表的なゲームです。
 『セミ捕り』に限らず、『かくれんぼ』や『スカートめくり』等、子供が好む行為のおおよそは名称自体で既に「ゲーム化」されています。
 では最後に『日常動作』はどうでしょう?『歩く』『走る』『持つ』等は「ゲーム」でしょうか?
 違います。『日常動作』だけでは、冒頭に述べた「ゲーム」に必要な要素が入っていないからです。


 でも、これら全ての事象を「ゲーム化する」ことはできます。


 オリンピック種目を思い出して下さい。あれらの種目の中で「ゲーム」として認識できないものがありますか?俺はありません。
 『記録』が残り『順位』という格付けが行われているからです。
 全て先程の3つの要素がしっかり入った立派な「ゲーム」です。
 多角的に人間の肉体と精神の極限を目指す事を「ゲーム化」してある訳です。
 だから見ていて面白い。逆に「ゲーム化」を放棄してしまったら、ただ『走るだけ』『泳ぐだけ』になって、やる側も見る側も面白くありません。
 参加することに意義があるそうですが「ゲーム化」した段階で、それは立て前ですね。


 「ゲーム」というキーワードの境界線といえば「あれはシミュレータ色が強いからゲームじゃない」という台詞を耳にしますが、大抵の場合は間違いで「ゲーム」として販売されていればきっと『スコア』や『ラップタイム』等の勝敗の手がかりになるキーワードが必ず入っているはずです。
 もしくはスコアが無くとも『通信』していれば、駆け引きから勝敗が生みだされる様に「ゲーム化されて」いる訳ですから、そこで「ゲーム」なのです。
 でも『スコア』等の表示は、昔から入っていて当然のモノなので「ゲーム」として認めるには説得力に欠け、認知されづらくなっているのも確かですし『ラップタイムを縮める』という自己鍛錬的なゲーム要素にしても、今では同様に認められづらいのも理解できます。
 ですから、そういう現状をふまえてゲームメーカーがもっと積極的に勝敗の手がかりの作り方をバラエティー豊かに提案していく事は大切です。
 更にその手がかりの部分こそが「このゲームはココを楽しんで下さいね!」というメーカーが主張するところの、まさに「ココ」に当たる訳ですから。


 次回は『「面白いゲーム」に必要なモノと「新規性」に対する考え方』です。



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