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名越武芸帖
『ゲーム批評』 マイクロデザイン社にて連載中(マイクロデザイン社のHPへ)

  
其の九 『ゲーム批評』2001年 最新号掲載中
其の八 ネットゲーム普及のために 『ゲーム批評』2001年 3月号掲載
其の七 伝えましょう 『ゲーム批評』2001年 1月号掲載
其の六 「良い」という感性について 『ゲーム批評』2000年11月号掲載
其の五 インタラクションとキャラクター 『ゲーム批評』2000年 9月号掲載
其の四 これからのゲーム 『ゲーム批評』2000年 7月号掲載
其の三 企画より大切なもの 『ゲーム批評』2000年 5月号掲載
其の二 新しさの意味 『ゲーム批評』2000年 3月号掲載
其の一 ゲーム成立の条件 『ゲーム批評』2000年 1月号掲載
 

其の四 これからのゲーム 『ゲーム批評』 7月号掲載
 今回は少し未来に向けて「これからのゲーム」というお題です。
 まずはゲーム産業の現状ですが、一時期よりも落ち込みは大きいと言われています。確かに事実です。
 これを否定する人はいません。かつて「不況知らず」と言われた(どういう根拠で言われたのかはわかりませんが)ゲーム産業は、今確かに不況を体験しています。
 でも「原因」は何なのでしょう?正確にこれを指摘するのは結構難しいようです。
 多く聞かれる声は「ゲームをする時間がナイ」とか「単に飽きちゃったから」等々です。どちらも理解できます。
 ただこれらは「原因」ではなく、むしろ「原因」が基で起きた「現象」に近いと思います。
 では俺なりに考えた「原因」は何かというと、業界は今「転換期」を迎えているからだと考えます。
 何の「転換期」かというと、ユーザーに対するサービスの転換期です。


 現在ソニー、セガとハイエンドマシンが続々と出現し、これから先も任天堂、マイクロソフトが加わって、第?期ゲーム機戦争の始まりを予感させています。
 でも思い起こせば十年以上前にもそんな頃がありました。
 当時も新ハードが出ると、どのメーカーもこぞってその性能を自慢していました。
 PCエンジンの「容量が?メガ!」とか「キャラがデカイ!」とかスーパーファミコンの「回転拡大縮小!」とか。
 その他にも「256色同時表示!」なんてのもよく聞きました。
 そしてユーザーは「スゲエ!」と言いながら戦略的マーケット攻勢にピタリとハマって、メーカーの一言一句に皆が注目していました。また、ハードの各機能を誇示すべく作られたソフト戦略も効果があって、ゲームソフトもたくさん売れていました。


 でも現在はどうでしょう?先述のハイエンドマシン達が提案している性能や役割に対して、世間の反応は?
 ……良ければ不況を感じてる訳がないですよね。ハッキリ言って反応は鈍い。
 ソニーの『DVD』『?千万ポリゴン』にせよ、セガの『インターネット』『ビジュアルメモリ』にせよ、「ゲーム」というモノが盛り上がる為の大切な要素として世間には響いていません。むしろ盛り上がり自体で言えば十数年前の「キャラがデカイ!」の方が胸がときめいていた気がします。
 おかしいですよね。『DVD』にせよ『インターネット』にせよ、ひとつひとつを取り上げると、時代のキーワードを押さえているし、少なくとも「256色同時表示!」よりは凄い事のはずなのに、当時のようにときめかないのは何故でしょうか?


 つまりこういうことだと思います。確かに『DVD』『インターネット』『?千万ポリゴン』は凄そうです。
 いや凄い事です。でも「ゲームの面白さの広がり」に対してダイレクトにつながるように聞こえるか?というと、違うのでしょう。何が違うかって?じゃあちょっと話が戻りますが、十数年前のゲーム機乱立の当時、ゲーム機の評価基準にあたるモノが2つありました。
 1つは業務用ゲームとの比較。そのゲーム機ではいかに業務用に近いことが可能なのか?
 2つ目はキラータイトルの有無。いわゆる定番売れ線モノが発売される予定があるのか?
 この2つです。それら以外のキーワードはほとんど相手にされなかった。現に俺もそうでした。
 俺にとって遊びたいモノ=『スーパーマリオ』だったので、この時点で任天堂以外のゲーム機は落選。
 でもその後のセガのマスターシステムを購入しました。きっかけは『アフターバーナー』の発売。
 キラータイトルと業務用の移植。自分で書いてて恥ずかしいぐらい、見事なプロトタイプぶりであった訳です。
 つまり当時の俺には「キャラがデカイ!」「回転拡大縮小!」云々は、前述の2つの評価基準に値する「ゲームをより面白いモノにする」ためのキーワードとしてミートしていたわけです。
 周りもそう感じていたんだと思います。だからブームになった。
 つまりメーカーのサービスが、ユーザーに対してマッチしていたと言えます。


 でも今の新世代ゲーム機の持っているキーワードからは、当時と同じ『ワクワク感』を与えるサービスは感じとれません。前述の2つの評価基準にしても、業務用ゲーム基板は家庭用とほぼ同じモノを使用しており、しばらくすれば家庭用に超えられる運命も見え隠れしています。またキラータイトルにしても、何かのきっかけで簡単にプラットフォームの移行だってありそうな現状では、「ゲーム機としてのワクワク感」には疑わしい気がしてしまう訳です。


 さて、本筋に戻ります。
 俺的には、これからを担うキーワードは『ネットワークサービス』です。
 肝心なところは「サービス」という言葉を加えている点です。

 ちょっと乱暴な言い方ですが、ゲームを遊ぶ上での参加形態は既に出尽くしています。
 一人でこそ面白いモノ。
 絶対に二人こそが最も面白いモノ。
 二人以上が特に面白いモノ、または二人以上でないと面白くないモノ。
 人数が多ければ多いほど都合の良いモノ。
 これだけです。
 その中から各種の取捨選択の後に最も相応しい形態を選ぶ事がゲーム制作の基本でした。
 これからも変わりません。しかし参加形態が出尽くした事は冒頭に述べた「転換期」を迎えた理由にも、つながってきています。
 でもそこに新たな驚きや興奮のエッセンスを吹き込むモノこそ「ネットワークサービス」なのです。


 「ネットワーク」といえば、やたら「遅延」や「料金設定」等のあげ足を取られがちですが、本当にマイナス面ばかりしか無いのでしょうか?解消できないのでしょうか?
 俺は色んな手段があると思います。
 例えば思い付きですが、『距離』の問題を「遅延」に直結させてマイナス要素としてばかり考えることをやめて「このゲームでは、実はつながっている相手との距離が遠ければ遠いほど……」みたいな感じで、『距離』の概念自体をゲームのフィーチャーとして盛り込み、新しいゲームファンクションの提案をする事だって可能なはずです。
 つまりマイナスをプラスに転換させる手段を考案する事が、今回言っている「サービス」にあたる訳です。
 DCの『インターネット』はキーワードの先取りはしています。ただ、肝心のコンテンツとのサービスの連携が消化不良でもったいない限りでもあります。しかし『ネットワークサービス』として再認識する自覚があれば、面白いモノは沢山出てくると思います。
 現状は、まさにそういったサービスの提案時代の入り口に差しかかった所なのです。
 だからこそ俺は「これからのゲーム」に対して決して悲観していません。
 新時代を『ネットワークサービス』をプラス思考に捉える事で、逞しく「遊び」を提案していきます。


 でも時折、せっかく「新時代!」って言うんだったら、ウチで飼ってる猫と対戦できるようなゲーム・インターフェースぐらい考案してみたいなぁ……。



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