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名越武芸帖
『ゲーム批評』 マイクロデザイン社にて連載中(マイクロデザイン社のHPへ)


其の九 『ゲーム批評』2001年 最新号掲載中
其の八 ネットゲーム普及のために 『ゲーム批評』2001年 3月号掲載
其の七 伝えましょう 『ゲーム批評』2001年 1月号掲載
其の六 「良い」という感性について 『ゲーム批評』2000年11月号掲載
其の五 インタラクションとキャラクター 『ゲーム批評』2000年 9月号掲載
其の四 これからのゲーム 『ゲーム批評』2000年 7月号掲載
其の三 企画より大切なもの 『ゲーム批評』2000年 5月号掲載
其の二 新しさの意味 『ゲーム批評』2000年 3月号掲載
其の一 ゲーム成立の条件 『ゲーム批評』2000年 1月号掲載
 

其の三 企画より大切なもの 『ゲーム批評』 5月号掲載
 さて、3回目に突入しました。これまでにゲームの成立の条件に始まり、新規性と面白さの関わりなんかを俺なりにざっと説明させてもらいました。今回は「企画」をテーマにしながらお話をしていきたいと思います。


 ゲーム開発の仕事の中で人気の高い商売は、今も昔も「企画職」です。
 でも以前から不思議だったのですが「企画」や「企画職」に対して、メーカーやチームによって随分解釈が違うことが多いようです。例えばある人は「企画」とは”命”である、と言いましたし、またある人は「企画」とは”ディレクター”だと言いました。「企画」とは”何でも屋”だと言った人もいます。ある意味ではおっかないですよね。だってある会社では”命”と呼ばれ別の場所では”何でも屋”と言われるんですよ。みんな「企画」からスタートする筈なのに、この違いは一体何なんだろうと思いませんか?「それは本人の能力に差があるからなんじゃないの?」という意見もあるでしょうが、俺が思うにたぶん「企画」や「企画職」に対する考えに幅があるせいだと思います。
 皆さんは「企画」とは何をする仕事をイメージしますか?
 多分一番多いイメージは「デザイナーが絵を描く」と同じく「企画書を書く」が多いんでしょうね。
 他には「アイデア提案役」とか「ディレクターみたいな人」て感じでしょうか?
 ちなみに「何でも屋」とか「雑用」とか思われた方は、たぶん気の合わない企画者と共に仕事をした経験のある企画職以外の業界の方、もしくは今現在、プロジェクトで厄介な問題を山ほど抱えて泣きそうになっている企画職の方ではないかと思います。
 では実際に「どんなゲームを作ろうか?」なんていう時、何から始めましょう?
 やはりまずは企画を決めて…でしょうか?
 現状のゲームメーカーの大半はここからスタートだと思います。確かに間違っているとは思いません。
 でも本来は「アイデア」からじゃないでしょうか?


 では俺にとって「アイデア」とは…
(1)企てや、組み立ての方法である。
・企画・計画・構想
(2)ロジカルに考える事である。
・思考・思案・工夫
(3)自由に思い(想い)願いながら考える事である。
・発想・空想・思想
(4)思いがけないヒントである。
・予感・心当たり・発見
(5)考えられるように気を配り、実行につなげる事である。
・考慮・配慮
 てな感じです。
 ここで俺は「企画」を「アイデア」の(1)の中に含んじゃってます。
 「アイデア」が企画よりもアッパーになる訳です。
 俺は「企画」とは「アイデア」を具現化するために、「設計」に極めて近い解釈をしていて、家を建てることにたとえるならば、図面作成の工程を受け持つ感じに似せて考えています。
 なので「アイデア」がなければ、「企画」のやりようもない。
 つまり前述の誰かの言い方を借りれば、俺にとっては「アイデア」が命です。


 そして俺は「アイデア出し」という作業を「企画職」に一極集中させてモノ作りを行う制作スタイルに、大変な疑問を感じます。
 なぜならそれは、「企画」というネーミングにのみ「アイデア出し」を押し付けてモノ作りをしている感じがしてならないからです。
 命を「企画職」に委ねるのもアリなのかもしれませんが、その方法だけが全てだとは思いません。
 「アイデア出し」は大変ですよ。考えてみて下さい。本来だったら期限を切ることすら難しい作業です。
 設計作業は内容とキャリアに応じてある程度期日が読めますが、俺自身「明日までに素晴らしいアイデアを考えてこい!」なんて社長に言われたりしたら、困り果ててしまいます。もちろんプロですから期限が決まっていればその中でベストなモノを出そうと努力しますが、考えただけで頭が痛くなります。
 産みの苦しみというモノは本来孤独な事だと思いますが、やはり辛いものです。
 もし「企画職」と名付けるだけで「アイデア」がバンバン出てくるんなら、スタッフ全員の名刺を明日にでも変えさせます。
 だから俺にとって「アイデア出し」は常に仕事上の大きなテーマになっています。
 ちなみに現時点で、俺はこう考えています。
 「全ては『アイデア』から」更に「『アイデア』とは誰もが追求する権利がある。ただし、提案した者は提案したアイデアに対して、必ず本人に責任を取らせる」。これを組織の理想としています。
 もちろん最終的に製品としてまとめる段階でキャリアの高い人間達が、提案されたアイデアに対してリスクの度合いや有効性を見極めるために、取捨選択の線引きは必ず行います。一歩ずつではありますが、日々これを実行しています。
 そしてそのプロセスから鍛えられた強い意志をもった人間が前述の(1)〜(5)を体験して解釈し、繰り返し実行できる、つまり「アイデア」を束ねてまとめ上げる事の出来る「ディレクター」になってもらえたら何も言うことはありません。
 でも「そんな完ぺきな人間いる訳ないじゃん!」と言われそうですよね。
 確かにその通り。俺自身にしても(1)〜(5)のバランスを文句なく保つことは、なかなかできません。
 一時期は相当悩んでました。でも現在はそんなに悩んでいません。なぜなら(1)〜(5)を器用にこなすだけが全てではなく、自分のうとい部分があればそこを謙虚に認めて、もっと得意な誰かにサッサと埋めてもらうという、欠点を自己認識して補填をしていくスタイルで作業しているからです。
 そうすれば俺も自分の得意な所に時間が割けるし、スタッフにも「アイデア」を出すチャンスが増える。
 反面リスクも増し、不安に感じるところも増すわけですが、個々のスタッフが「アイデア」に対する責任を感じる瞬間が増えて士気が上がる事の方に、俺は魅力を感じます。
 そしてそういう発想をするためには、俺という人間にとって前述の(1)〜(5)の意識付けが、人を扱う面で大切な「アイデア」にもなっている訳です。
 つまり本当に大切なのは「企画」ではなく「アイデア」をタイムリーに引きだし、クリエイティビティーを高く保つことができる「組織作り」でさり、その方が遥かに大事だと、俺は思います。
 次回は「これからのゲーム」についてお話します。



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