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名越ダイアリー
(2002/09/02)
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2000/09/22
プレゼント
 以前、ネタが暗いとうことで、急遽掲載しなかったネタを今回はお出しします。
 日本映画です。正直なところを言うと若い頃、というか子供の頃から日本映画は苦手でした。
 何だか薄暗く、気難しい雰囲気が立ちこめていて、とても近づきづらい印象でずっと避けていました。
そして同時にその頃は、音楽に対しても同じ感覚をもっていました。演歌を中心とした日本語の必要以上にベタベタした、情に流された質感がうっとうしく、苦手にしていた時期があります。
でもある人に「それは自分が無意識に何かを吸収したがってる証拠だ。」と言われたのがきっかけで、考え直すようになり、更に年を追うごとに、同じカルチャーで生まれたからこそ伝わる、沢山の素晴らしい作品があることを知ってからは、食わず嫌いの自分に後悔して、今では日本映画も大好きです。
 と言うわけで、今回は「今村昌平監督作品」に触れたいと思います。まずは「うなぎ」から。
皆さんは観たことありますか?この作品。別に「うなぎ」が主人公ではありません。主人公は役所広司が演じる床屋の主人です。
サラリーマンであった彼は、釣りが趣味で夜釣りに良く出かけていたんですが、ある日受け取った1通の手紙によって、夜釣りの間、妻が毎度のように浮気をしていることを知らされます。それからある日、予定より早く釣りから帰ってみると事実、妻の浮気現場を目撃してしまいます。
 逆上した彼は妻と男の2人を刺し、特に妻には何度も包丁を突き立てる。といったショッキングなスタートからお話が始まります。
 この事件をきっかけに彼は人間不信になり、服役中に飼うようになった「うなぎ」にだけ心を開くようになっていきます。
 数年の服役の後、彼は床屋を営み、新しい生活を始めるんですが、ある日、睡眠薬で自殺をはかった女性を偶然発見して助け出します。
そして、その行くあてのない女性と一緒に働くことになるんですが、日々様々な事件が起きながらも、平和な時間が訪れ、その女性との生活に安らぎを感じるに連れ、その女性を深く愛し始めた自分を悟り、同時に過去の記憶が蘇り、愛することを憤る...という大変に切ない物語です。
 そして観ているうちに「うなぎ」というのは題名だけでなく、物語の途中から、うなぎの習性と物語の展開が重なり合っていることに気づくでしょう。しかもその辺りに、ほほ笑ましくもささやかな感動すら覚えていきます。
ちょっと内容に触れ過ぎかな?でも描写が深いので、コレ読んでから観ても全く問題ありません。本当に面白いですよ。
 ご存知の方も多いと思いますが「うなぎ」は1997年の第50回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した作品です。ちなみにカンヌは日本人にとっても有名ですが、意外にも「作品」でグランプリを獲ったのは、黒沢明監督と今村昌平監督2人のみです。しかも現代の日本のありふれた情景と情感を真っ向からぶつけた作品が獲ったというのは、すごいことです。
 そういう意味では黒沢監督の「影武者」よりもすごいと思う。
 もちろん賞なんてセールストーク的基準なので、観た人が面白くなければどうでも良いことですがね。
 他にも今村監督作品は「楢山節考」(1983年)であったり「黒い雨」(1989年)なんかが有名です。
 ちなみに「楢山節考」は食糧不足のため、長男以外は結婚を認められず、老人はある年になったら子供に背負われて、楢山という山に捨てられなければならない。という決まりがある山奥を舞台にしたお話です。
 神を信じ「捨てられることは神に召されること」として、悲しまず、むしろ喜んでいるかに見える老婆の姿と、それを背中に負い、捨てるという形で母と別れをしようとしている親子道中のくだりは、人間の運命の中でも、人と人、親と子、様々な関係に対してあなたにたくさんの問いかけをしてくるでしょう。
 あなたは主人公と老婆の行方に何を感じるでしょうか?ぜひ観て下さい。

 今村作品全体を通して感じるんですが、キツいテーマを深いネタで組み上げ、等身大に噛み砕いて語る手法が俺には印象的です。そしてその説き方に氏の愛情の深さをとても強く感じます。
 観たことのない人は、少なくとも前述した辺の作品は観てほしいところですね。では。
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